チェーン・スポーキング

カルチャーずるずるモノローグ

備忘録 2017

飯も映画も音楽も含め「どうやって編集したか」を起点に楽しんだ一年だった。

オフィスレディ歴も3年目に突入したので、またずるずると昨年を振り返る。

 

【泡を吹いた音楽:3選】

 

#『何度でも新しく生まれ変わる』MONDO GROSSO

 

乃木坂の斎藤飛鳥起用も然り、

声質を見極めるスキルが高い。MONDOGROSSO節に適したボーカルを当てはめ、楽曲を完成させていくまでの編集能力が突き出ている。

歌声を楽器として取り込んでいくニュアンスに近いのか。

 

#『good vibrations-EP』堀込泰行

 

D.A.Nとのコラボ曲で完全に持って行かれた。気に入りすぎてそのままLP盤も購入した1枚。人選も抜群。

 

MONDOが自分の曲起点でコラボ側をナチュラルに取り込むのに対し、

堀込泰行は相手のフィールドで自己のスタンドを使いこなすイメージである。

 

 

#『SiO2.nH2O』Silica Gel

 

今のジャパンシティポップが山下達郎をオマージュするように、

シリカゲルは「韓国の古き良き」を盛り込みながら、新しいスタイルを築いている。

世界基準なKPOP文脈からは逸脱した動きをしていて、

韓国カルチャーのなかでも特に気になっているバンド。

日本と韓国、海を隔てカルチャーの動きがシンクロしている。目が離せない。

  

【惚れた映画:3選】

 

#『ムーンライト』

 

童話みたいにピュアで残酷な映画。

色んな社会問題をギュウウウっと濃縮還元100%にしているが、

美しい愛の物語であることは変わらない。

ただストーリー以上に、ライティングとカメラワークに感動した。

夜のじめっとした空気と、砂埃の匂いが画面越しに伝わってくる。

 

主人公が第三形態で突然ムキッとなったのは、ちょっと笑った。

 

#『パターソン』

 

終わらない日常の中で、ほんの数ミリずつドラマが動いていくものだから

「最後にめちゃくちゃ悪いことが起きる」こと前提で先読みをしてしまう。

ただ最近の映画の中では、こういった類のもどかしさが残る作品が無く

だからこそめちゃくちゃ印象に残ってしまっている。


明快な起承転結やドラマチック性だけを映画に求めた結果、

映画を観るとき、ずっと緊張が張り詰めている状態なのかもしれない。

 

#『エンドレス・ポエトリー


ホドロフスキーの青年期の葛藤と、少しの後悔を描いたストーリー。

良い意味で不快。ホドロフスキーの血管が勝手に体内を侵略してくる。

無理矢理他人の血を流しこまれているような、最高の不快感である。

 

話とは関係ないが、倉庫でパーティーを開いてみたい。

 

【セクシーだった食:4選】

 

 #ともすけ(馬喰横山

 

森のなかみたいな雰囲気のある、落ち着いた空間の店。

 

野菜をはじめ、素材すべてが甘くてやさしい味がする。

特に鮎のほぐし身のパスタが絶品だった。

ずっとここのパスタをすすって生きていれば、穏やかに寿命を終えられそう。

 

#Locale(目黒)


今年できたばかりのカジュアルフレンチ。

フランス人女性シェフのキッチンさばきを目の前で眺めるのが楽しい。

そしてワインのチョイスが独特で、柑橘系に振り切っていたり、

びりっとスパイシーだったりと、今までに飲んだことのない味を楽しめる。


仕入れる食材が日によって異なり、行くたびにメニューがアップデートされる。

毎週通いたいし、Localeで朝を過ごしたい。

 

#FREY'S Famous Pizza(六本木)


ピザをズルズル滑り込ませたい時に足を運ぶ店として、

2017年、六本木のフレイズがリスト追加された。

 

生地がむちむちしていて食べ応えは抜群なので、

ビール一杯とピザ一皿でサクッと済ませるのが粋かと。

1人〜MAX4人で行くのがおすすめ。

 

ハイチェアに座っているとアメリカ映画の気分を味わえる。

 

#阿里(那覇


沖縄の超ディープなお粥屋。

店自体はビビるほど汚いので、潔癖症の傾向がある人には不向き。

ただ、味は目が飛び出るほど美味しい。

ちょっと塩っ気が効いた、最高の朝食を楽しむならここ。

  

【目眩を起こした展示:4選】

 

#エマニュエル・ソーニエ展

 

ジャズピアニストであるセロニアス・モンクへのオマージュ。

縦横無尽に駆け回る音に、そのまま姿形をもたせた展示。

アニメ映画『ファンタジア』を思い出す。楽譜のなかに飛び込んでいく感覚だった。

 

#草間弥生 わが永遠の魂

 

幼少期のデッサンから今に至るまで、作品量が多すぎて脳内処理が大変だった。

作品を時系列で見ると、彼女がいかに「セルフ・オブセッション」に苦しめられ、

向き合い、昇華させていったかがわかる。

まさにベートーヴェン『運命』のような半生。

 

#JOAN CORNELLA展

 

無表情の無関心さと、ともすれば鑑賞者も「例のあの顔」になっているという不気味さ。

風刺画なのにこんなにもファッショナブル。どこかで見たことあるぞ…。

って思った時に出てきたのが、HAPPY TREE FRIENDS。社会風刺入りのハピツリ。

 

#ジャコメッティ

 

「もうやめて!!」となった。

展示自体は良かったが、フラッシュを作品にたいている人が多く、

インスタ映え」トレンドにめちゃくちゃ苦しんだ。

初めて展覧会に行って負の感情が生まれた。

 

逆にJOAN CORNELLA展では写真に抵抗がなかった(自分も撮った)ので、

写真を撮ってもいいアーティスト・撮らない方がいいアーティストみたいなもんが

自分のなかで区切られるようになったのかなと思う。SNS新基準。

  

【震えた舞台:3選】

 

#『なむはむだはむ』コドモ発射プロジェクト


こどもの作ったストーリーを、おとなが演じるという不思議な実験。
もはやストーリーなんて枠組みはなかった。それでも情景がわかった。

「わざと絵を下手に描く」「わざと音痴になる」ことがものすごく難しいように、

アウトプットが難しい取り組みだったはず。

 

#『野田版 桜の森の満開の下』8月納涼歌舞伎


初めての歌舞伎体験が現代歌舞伎であり、しかも野田秀樹

歌舞伎の伝統的な「型」をベースにしながらも、台詞回しはがっつり野田秀樹調。

大舞台で満開の桜を散らす演出が幻想的で、ずっと観ていたかった。

 

#『BGM』ロロ

 

記憶を呼び戻す痕跡を探し、対話する作品。

シーン毎の鍵となっているのは、江本祐介の楽曲。

BGMによって繋がれる過去と現在の往来が心地よくて、

今と昔がユニゾンを起こした時は、背筋がぞわぞわした。

 

【痺れた雑誌:3選】

 

#HR「フォトジェニックなGeek世代」

 

今の高校生がどんなアプリをダウンロードしているかが気になるのは、

もう高校生とたまたま知り合う機会が少なくなっているからだと思う。

彼・彼女らの「いいね」に懸ける熱量が伝わる、永久保存版の一冊。

 

#EYESCREAM「Seoul Calling 韓国サブカルチャー新世紀」

 

ありそうでなく、とうとう来たと感じた特集。

音楽・アート・書店・ショップ・ファッションをすっきり横断しているので、

次にどこをディグればいいかがわかりやすい指南書になっている。

一番嬉しかったのが、韓国カルチャーの総関係図を作ってくれたこと。

 

#Spectator「パンクマガジン『JAM』の神話」

 

STUDIO Voice」「Tokyo Graffiti」も然り、2017年はおしゃれエロ特集が重なった。

でも一番過激で面白かったのはSpectatorのJAM特集だった。

今や入手困難な伝説の自販機本の再録が嬉しいし、編集長・佐内順一郎の編集記がしびれるほどかっこいい。

 

2018年はエロ本を作りたい。

 

【新しい活動】

 

#韓国と香港に行く

 

香港は満島ひかり「ラビリンス」だけのもんじゃなかった。

もっとグランジだとかハウスだとか、色んな音楽をカチカチ当てはめたい光景だった。古い通りに紛れ込んで、人に追いかけられてみたい。


韓国はひたすらご飯の旅だった。

香港、台湾と経験して、一番日本に近い感覚がある。匂いがほとんど無い。
次に行く時は、昼間のホンデを歩いてみたい。

 

#フィルムカメラを買う

 

もともとデジタルに手を出したきっかけは、写真の知識を取り入れるためだった。

そしてフィルムに手を出したきっかけは、「写ルンです」と比較するためだ。あとは流行。

自分でキリキリと露光を調整するのが楽しい。

 

#インスタのストーリー機能にはまる

 

インスタの配信が一方通行になりがちななか、

新たに双方向の画像・動画コミュニケーションとして活用している。

何より、加工にこだわらずにさっと上げられることにハマる。

 

【総括と今年の目標】

 

2015年に肥やしたのが舌、2016年が耳だとして、

2017年は「文字」を肥やそうとした年だった。

いろいろな書き方、スタイルを知りたかったし、

文字を通して、誰が(どの媒体が)どうやって情報を調理しているかにも集中した。

 

様々なジャンルの雑誌・書籍を読み込むなかで、

だんだんと自分が欲しいと思う「新情報」の意味合いが

「鮮度を求めるもの」から「斬新さを求めるもの」へと変わってきている。

 

まだ処女を捨てきれていないコトモノが世界には多いので、

次はどこの新情報で処女を捨てに行こうかと、うずうずした新年である。

 

高木 拝

 

昨年度以前のアーカイブはこちら

 

none67.hatenablog.com

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