チェーン・スポーキング

カルチャーずるずるモノローグ

16年5月:「ヌード=エロ」の世の中に悶々とする

[Movie] 

 


映画『バンクシー・ダズ・ニューヨーク』予告編

 

バンクシー・ダズ・ニューヨーク」を観た。

NYの至る所に痕跡を遺していく謎のアーティスト・バンクシー

彼(彼女?)のゲリラ活動に熱狂するファン、

そして痕跡をお金に換算して翻弄されるギャラリストたちの姿を、

メディチックに描いたドキュメンタリーだ。

1ヶ月の盛大な追いかけっこを仕掛けたバンクシーは、

どこまでを「想定内」と捉えていたのだろう。

顔を見たことがないけど、多分勝ち誇った顔をしている。

 

バンクシーの作品には、強烈な社会風刺が頻繁に登場する。

「リトルマーメイド」のアリエルを石油まみれにしたり、

家畜用トラックに牛とか豚のぬいぐるみを詰め込んで

肉屋の前に停車させたりしている。

これを言うとだいたいドン引かれるが、

バンクシーのこういう嗜虐的な表現にめちゃくちゃ惹かれる。

もっとダイレクトに言うと、なんか超エロい。テンションが上がる。

引くなら引くがいい。恐れるものはない。

バンクシー、マジエロい。

 

[Art]

 

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さて、「エロい」を構成する上で必要不可欠な要素は「背徳感」だと思う。

目を逸らす要素が無ければ、そこに「エロ」は生まれない。

逆を言うと、何かに「エロ」を感じる時、そこには背徳感が存在しているはずだ。

 

初台のオペラシティー アートギャラリーで開催されている、

Ryan Mcginley(ライアン・マッギンレー)の個展「Body Loud!」を観た。

壁一面を覆い尽くす、おびただしい数のヌード。

それでも、全くエロくない。

恥じらう姿が一切ないからだ。緊張の解けた顔をしている。

インティメシーと呼ばれるものだと思う。

ギリシャ彫刻のような神聖さ、潔さもあるし、

人間が「動物」だったことを思い出す一面すら感じた。

 

撮られている人々にも、撮っている人にも、背徳感が無いからだと思う。

エロくないヌードだってあるのだ。

 

どうせエロい目で見てる人たちには「けしからんモノ」に映るのだろうけど。

 

[Magazine]

 

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「けしからんモノ」でいうと、荒木経惟の写真はかなりキワドくて好きだ。

足をガバっと広げているネエちゃんの写真とかは

ライアンの撮る人間の「動物っぽさ」に共通する感情を抱くが、

それと同時に「見ててスンマセン」という気分にもさせられる。

疲弊する背徳感だ。げっそりする、ともいう。

 

ただ、記念すべき復刊を果たした「i-D JAPAN」の水原希子は、

そういった目も当てられない類のエロではない。

ピュアで上品だからこそドキッとさせられる。

生っぽさがエロい。

背徳感があるとすれば、

エロの対象として見ちゃいけないモノにエロを感じた自分への背徳感である。

 

「i-D JAPAN」の復刊、どうなることかとヒヤヒヤしていた。

隅々まで情報がエロくて(※健全な雑誌です)ピュアで、安心している。

でもこれからもっとディープな情報をくれるはずだ。

こんなんじゃ物足りない。いいぞもっとやれ。

 

[Music]

 

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これだけ「エロ」を連呼するなら、一つ言っておきたい。

「エロ」とは視覚情報だけではない。

西のトラックメイカー・Seihoの3年ぶり新譜『Collapse』は

どうしようもなくエロかった。

Sugar's Campaignのポップなイメージから一変し、

より実験的な方向へ進んでいるが

不規則に入る無数のサンプリング音がもう気持ちいい。

『Edible Chrysanthemum』の、生楽器と電子音の掛け合わせも最高。

音の重なりを「絡む」と表現することがあるが、

まさに絡みアリの作品である。

 

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一方、STUTSの『Pushin'』は、最高に渋みのあるエロである。

熟女的なトラックを求めている人にはたまらないアルバムだ。

新旧サウンドの「時代」を超えた絡みだけではなく、PUNPEEや呂布カルマ、Alfred Beach Sandalといったゲストとの絡みがたまらない。

ここ最近ずっと聴いている。身体が相当こういった渋さを求めているのかもしれない。

あるいはそれが流行なのか。

 

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でも、時を重ねて熟成されたエロには敵わない。

New Orderの来日コンサートを新木場スタジオコーストまで観に行った。

歌は下手くそである。演奏は思ったより良かった。

ただ、曲は一切衰えない。『Perfect Kiss』なんて60歳のおっさんが歌ってるのに!

おっさんになっても根っこのスタンスは変えずに、

かつ時代に適合できるからこそ可能な演奏なのだな、と。

「敵わない」という感想がぽろっと出てきてしまった。

 

衰えないなんてことはできないので、

どうせなら年相応のエロを身につけながら衰えたい。

そうすれば「アンタは衰えないネ」なんて言われるんだと思う。

 

そしてここまで話しとおして分かったのは、

「エロ」って「魅力的」と同義なのではということだ。

 

エロい(魅力的な)1年にしたいなとウキウキしている。

これが、24歳初めての投稿である。