チェーン・スポーキング

カルチャーずるずるモノローグ

備忘録 2015

2015年は自分にゆとりがあったせいか「当たり」を引くことが多かった。

せっかくなので特に「大当たり」だと感じたモノをすごく雑にまとめる。

 

【粉砕されたアルバム:4枚】

#『SOUND AND COLOR』Alabama Shakes

これを抜きに2015年は語れない。

そしてライブ映像でヴィジュアルを見た時の衝撃たるや、筆舌に尽くしがたい。

 

#『POSITIVE』tofubeats

コラボレーションのラインナップ然り、Jポップへ振り切っている。90年代と10年代をバランス良く融合していることがツボ

インディー系が70年代、ロッキンがゼロ年代に向かうなか、新たなシーンを生み出す引き金となったアルバムだと思う。1stよりイイ。

 

#『Tuxedo』Tuxedo

「古き良き〜」が世界全体で流行っているのか、それとも自分が好むようになったのか。多分両方。

 

#『SAYONARA』SAKEROCK

表題曲、幾重にもわたる音の層に涙腺が負ける。

力を振り絞ったのが伝わる。名盤。

 

個人的には豊作。新作をガンガン聴けるApple Musicのおかげもある。

ライブもまたFKA Twigsに始まり、タイコクラブで観たロバート・グラスパーや京都音博の八代亜紀など「当たり」が多かった。そういえばマルチネ「天」も去年か。

 

なお、本格的にヒップホップにはまってしまった。

 

【沁みた美術展:3展】

#「岡崎京子 戦場のガールズ・ライフ」

普段から岡崎教に洗脳されていたものの、展覧会に行ってから信仰が更に深くなったというかなんというか。古くならないなと思ってしまった。

 

#「われらの時代 ポスト工業化社会の美術」

金沢21世紀美術館にて。決して大きい展示では無かったが、美味しいところを的確に攻める姿勢が良かった。無駄がない。

特にスプツニ子と束芋の展示が記憶に残っている。

 

#「ウォルフガング・ティルマンス the body is yours」

大阪。待ってました。伸縮を繰り返しながら徐々に拡大していく視線と、連続する複数のテーマに操られる展示だった。そして手がけた仕事の多さにため息。

 

美術展は意外にも不作。足を運んだ割にあまりときめく展示が無かった…。

むしろ常設展にハマった1年だったかもしれない。直島の地中美術館は最高だった。

 

【痺れた映画:3本】

#『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』

脚本も映像も役者もスターばっか揃えやがって…と歯軋りが止まらなくなる作品。

長回しの技術だけではなく、舞台の空間に馴染ませたBGMにも脱帽。全体的に舞台のルールをベースとした演出なのだと思う。観るたびに解釈が変化していくスルメ映画である。

 

#『野火』

視覚と聴覚を伝い、嗅覚や味覚にまで影響を及ぼす映画。血の味や火薬の匂いなど、主人公が受け取る全ての情報が流れ込んでくる。

終わったあと暫く放心状態が続き、直後に10°Barで酩酊。

 

#『WILD STYLE』

渋谷の再上映に乗っかる。80年代ヒップホップ黎明期における貴重な記録映像。神様(FAB FIVEとかグランドマスター・フラッシュとか)がドバドバ出てくる。

最後のライブシーンはクドいけど泣ける。

 

新作は16本。旧作は10本。トータル26本。

例年より観ている方ではあるものの、見逃した新作は数知れず。

年末にまとめて逃し分をチェックしようと思ったが、やはり今年もダメだった。

ちなみに期待との落差が最も激しかったのは『EDEN』

 

【エロすぎた食:5店舗】

#Kyotonese(京都ネーゼ)

バイトの元同僚・ゆかさんに教えてもらった京都の名店。

エシレバターを使ったパスタが泣けるほど美味しい。

 

#ぽんしゅ館

越後湯沢のサンクチュアリ。500円で塩を肴に日本酒5種の飲み比べができる。

ここで日本酒修行を終え見事開眼。日本酒依存になる。

 

#川福

うけさんの紹介により高松で食べた。たしかにうどんは生き物だった。

私は貝よりもむしろうどんになりたいと思った。余談ながら五反田のおにやんまも美味しい。

 

#大木屋

日暮里の名店。ものすごく大きい肉の塊を焼いてくれる。美味。

完全予約制&少人数お断りのため、直前にめちゃくちゃ人を集めようとした記憶がある。

 

#某池袋の焼き鳥屋

初めて焼き鳥の美味しさを知った場所。

美味しすぎて紹介したくないため名前は控えますが「ちょうちん」というメニューがツボ、とだけ。

 

この一年で何が一番鍛えられたかと聞かれたら「舌」と答えると思う。

いかに関西のレベルが高いかを知った。

ただ越後湯沢も香川も一人旅だったので、もう一人くらいいればもっと面白いとこ行けたんかなあとも。付き人を募集。

 

【新しい活動:4つ】

#編集者バイトのチーフになる 

 菅付雅信さんのもとでアシスタントを始めて3年目に突入し、仕事が急増する。

毎月の連載と特集などに追われた1年だったが、一番近い距離で編集の仕事を見ることができた。ちなみに史上最凶のハードモード期間は10月末〜11月初頭だった。

 

#Webメディアに関わる

このバイトを始めたおかげで、Webにおける「読者の顔」が見えるようになった。そしてジャニーズやK-POP西野カナをしっかり聴くようになった。Web広告に興味をもったきっかけでもある。

 

#ライティングのお仕事をいただく

記者会見に行って即日入稿したり、短期間で大量の文章を校正したりするなど、速さを求められる仕事が多かった。

しんどいがしかし、楽しい。

 

#中夜祭をやる

広報を担当。自分がまだ学生だったことを思い出すきっかけだった。

ネジが数本外れた一ヶ月だった。

 

就活も学校も終えたので、バイト三昧の1年だった。

ただ心残りがあるとすれば、もっと色んな会社と仕事をしたかった。

 

【総括と今年の目標】

日々押し寄せてくる情報の渦にのまれかけながら「コレだっ!!!」と狙いを定め、時々不味いものを噛みつつも次の獲物を狙う1年だった。

今年は去年以上に多くの獲物を狙っていきたい。あと、強いて言えば色気が欲しい。

 

同じ絵を15分見続けるんです

夏休み、国立近代美術館の学芸員さんの下で勉強会を行った。180分現代アート漬け×3コマという濃密プラン。拙いプレゼンの足りない部分をバッキバッキに補足していただいた。頭が上がらない。

 
先日、最終講義ということで色んな質問に答えてもらった。
例えば「なぜベーコンの絵に惹かれたのか」や「なぜ学芸員になったか」など。先生はひとつひとつの質問に、丁寧に答えてくれた。
その中でも印象的だったのは、「アートを本当に理解しているか分からない、どのような見方が正解なのか」という質問への回答。「正解というものはないけれど」と前置きした上で、先生の答えはズバリ、こうだった。
 
「一回の展覧会のなかで、15分間同じ絵だけを見続ける習慣をつけてみてください」。
 
例えば、私はアートを鑑賞するときに「あー、これはあの理論を使ってんだな」とついパターン化して観てしまっていた。「満足感が続かねぇ…観た気がしねぇ…」というのが目下の悩みだったが、この「パターン化現象」も、やはり原因は鑑賞時間が短いせいだという。大事なのは「理論に囚われず、ひとつの作品からどれだけ多くの発見を導けるか」ということらしい。タシカニー、タシカニ。
 
現代アートは、制作の背景を読み解くことに意味がある。そこにそういった表現がある以上、何かしらの伝えたいことがある」と先生は続けた。パッと見の判断でそれら伝えたいことを理解することなんてできるわけがないのだ。
 
勉強会の後、試しに15分同じ絵を見続けてみた。かなりキツイ。しかし、隅から隅まで舐めるように観ることで、今まで気づかなかった筆跡や色の混ざり具合など、細かい情報が少しずつ頭に入ってくる。自分の固定観念は、時間をかけてぶち壊せばいいのだな。
 
私にとって美術館とは整体院のようなもので、歪んだ骨盤を矯正してくれる場所だ。毎月通っていないと何となく身体が鈍るので、今までの下手くそな鑑賞方法ながらも何かしらの得ているものはあったのだろう。ただ、核心の本当に凝り固まっているところは刺激されていなかったのかもしれない。
 
勉強会で痛いツボをグイグイ押されたので血流が良い。濁らないうちにまた整体に行かねば。